競輪マンガ制作PJ始動! 連載作品制作チームの裏側をインタビューしました

column2021.12.14

2021年7月から競輪総合メディア『netkeirin(ネットケイリン)』のコラムコーナーで「サラリーマン松田のささやかな幸福」のマンガ制作と連載がスタートしました。

本作品は、LEGIKAが運営するシェアハウスGraphium House OBの戸城イチロさんが作画を担当し、Graphium Houseの居住者が、制作アシスタント業務を担当しています。

つまりGraphium Houseの新旧居住者がチームを組んで制作活動にあたっています。実はこのチームでの制作は、マンガ家志望者が抱えるある課題に対して重要な意味を持っています。

今回は、本作品の魅力、そしてチームでの制作の背景をひも解くべく、作画担当の戸城イチロさん(以下、戸城)とLEGIKAスタッフの対談形式でインタビューを行いました。

「Graphium House(グラフィウム・ハウス)」はLEGIKAが運営するクリエイティブ志向のビジネスパーソンを集めたシェアハウスです。「住」と「働」が一体となった場で、仕事と日常生活のオンオフ両面でのチーム形成を通じて、能力形成を図っていくことをコンセプトとしています。

Graphiumプロジェクトとして、企業向けのマンガ制作事業と一体となり、住まいの場で、新しい表現物を生み出す取り組みを進めています。

また、LEGIKAでは「トキワ荘プロジェクト」というマンガ家向けシェアハウスを運営しており、現在約70名が入居・所属をしています。

 

―「サラリーマン松田のささやかな幸福」は競輪をテーマにしたマンガなのですね。まずはどんな作品なのか教えてください。

LEGIKA理事長 小崎文恵(以下、小崎)「このマンガは、ごく一般的なサラリーマンである主人公・松田が、会社づきあいや家族との交流の合間に競輪を楽しむ姿を描いています。競輪総合メディアの『netkeirin』を運営する株式会社ネットドリーマーズからいただいたお話です。原作はベテラン競輪記者である五十路ボンバイエさんが担当しており、ベテラン記者ならではの視点で競輪の魅力を描いています。競輪は、選手の実力や調子だけではなく、性格や人間関係も予想の大きなポイントです。未経験の方は楽しく競輪を学べて、上級者の方にはうなずきながら読んでいただけるマンガになるよう、原作者やネットドリーマーズとも相談しながら制作しています。」

―本作の制作にあたって、どういった経緯で戸城さんに作画を依頼されたのですか。

小崎「まずは自転車といったら戸城さんというイメージがすぐ頭に浮かびました。自転車でどこにでも行くと聞いていたので……。」

戸城「今日もここまで自転車で来たので、自転車にはとても親しみがあります。でも競輪自体には今まで触れたことが無かったので、お話をいただいてからは資料や動画で研究しています。実際に、舞台となっている川崎の競輪場も見学しました。」

小崎「作風が作品にマッチしていることもあり、ネットドリーマーズに戸城さんを推薦したところ、即決していただきました。また、LEGIKAでは以前からGraphium Studios登録者内でチームを作ってマンガ制作ができないかとずっと考えていました。戸城さんなら絶対賛同してくれると思い、作画依頼と合わせてこのチーム作りの相談をしました。」

―どのようにチーム作りを進めたのですか。

戸城「お話をいただいたときに、僕からはアシスタントをGraphium Studiosの登録作家から募集させて欲しいとお願いをしました。他の案件もある中で連載を抱えるとなると、自分一人では少し大変だなと。そして、これは僕なりのトキワ荘プロジェクトとGraphium Houseへの恩返しなのです。」

―恩返し…もう少し詳しく教えてください。

戸城「マンガ家のアシスタント未経験者って、どんなに即戦力であっても、未経験っていうだけでなかなか雇ってもらいにくいのです。本当に一から教えなければならず、どこの現場も教える時間も惜しいくらいに忙しいので、書類選考の段階で不利になってしまって。逆に、アシスタント経験があるというだけで選考のハードルが全く違ってきます。

だからトキワ荘プロジェクト・Graphium Houseのメンバーの中で、即戦力レベルのアシスタント未経験者に自分のところでアシスタント経験を積んでもらい、今後のマンガ家としてのキャリア形成・修行の場を探すための一歩目にしてほしいと考え、このような提案をしました。僕自身がトキワ荘プロジェクト※とGraphium Houseには合わせて5年ほどお世話になりましたし、僕も駆け出しの頃にこの苦労をしたので、この0→1で困っている方がいればぜひ力になりたいなと。」

(※戸城さんは、LEGIKAが運営するトキワ荘プロジェクトのOBでもある)

―それでは今はGraphium House(Graphium Studios)のメンバーと一緒に制作をしているということですね。実際にアシスタントの方たちの様子はどうですか?

戸城「NEWVERY協力のもとアシスタント募集をして、選考は僕が対応しました。最終的にはIさんとKさんというお二人の方にアシスタントをお願いしています。わざわざ選んだわけではないのですが、ふたりとも偶然僕と同じGraphium House 高田馬場の居住者だったのです。Iさんにはオンライン上で3Dモデルの操作方法のレクチャーし、Kさんには対面でパースのレクチャーをしましたが、ふたりとも即戦力に近い状態でした。

実はふたりとも、今は別のアシスタント先で忙しくなってしまって、なかなかスケジュールを押さえられなくなっていて…僕は少し大変です。でも0→1で力になりたくて始めたので、狙った形になったことはとても嬉しいです。」

小崎「今回、戸城さんが提案して下さったような形は、今後Graphium Studios内で増やしていきたいですね。もう少しチームの規模を大きくしていけば、今回の戸城さんのようにスケジュール面での悩みは解消されるでしょうし、マンガ家の卵のみなさんにとっても、キャリア形成の上で必要な経験を積んでいける場になれば良いのではと思います。ただの住まいだけではない場にしていきたいです。」

戸城「マンガ業界にとっても今後必要なものだと思います。ゆくゆくはアシスタントの地位・収入・待遇も良くなって欲しいですね。今は各現場が個別で募集をしていて、採用で悩んでいる現場もあるはずです。NEWVERYに相談すれば、という存在になったら、業界全体にとってポジティブな変化があると思います。」

―今後の展望も広がりますね。制作の裏側まで面白くて驚きました。それでは最後に、改めてマンガ本編のお話も。今後の見どころなどがあればぜひ教えてください。

戸城「今(インタビュー当時)は第4話まで進みましたが、キャラクターが動くようになってきて僕も描いていて楽しいんです。特に第3話から登場した井上(主人公・松田の部下)は表情が豊かですよね。読者のみなさんにもきっと共感していただける存在だと思います。

そして実は、これからもう1人メインキャラクターが出てくる予定です。キャラクターメイキングにはかなり試行錯誤したので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。」

―幅広くお聞かせいただいてありがとうございました。第5話以降も楽しみにしています!

 

戸城さんのデスク。ワコムの液晶ペンタブレットで作成。

 

戸城イチロ

マンガ家。2010年~2014年まで「トキワ荘プロジェクト」ひばりが丘荘・富士見台荘に入居。(いずれも現在は閉鎖)

その後2018年8月~2020年11月までクリエイター向けシェアハウスGraphium House 高田馬場に入居、シェアハウス内でイベントを実施するなどハウス内のリーダー的存在として活躍。マンガ制作以外に美術講師などでも活躍中。

 

株式会社ネットドリーマーズ

サラリーマン松田のささやかな幸福

Vol.1「地元割増し」 

Vol.2「逃げイチは黙って買え」

Vol.3「松田、弟子を取る」

Vol.4「一番弟子のデビュー戦」

Vol.5「ラインを知らずに競輪は語れない」

月刊連載中。毎月下旬頃に新作を公開しています。

 

(Special Thanks)寒天工房讃岐屋

Graphium House 高田馬場の1Fにあるお店です。戸城さんは引っ越した後も行きつけにしていて、アシスタントのKさんへのレクチャーもここで行ったそうです。

今回の取材場所としてご協力いただき、また居住者にもいつも親切にしていただき、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

讃岐屋で居合わせたご婦人が、インタビューのやりとりをお店の中で聞いていらっしゃったようで、お帰りの際に応援の一言をかけてくださりました。「若い方がマンガ家を目指してこうして頑張られているのは、マンガ好きとして嬉しいことです。」私たちもとても励みになりました、ありがとうございます。

 

LEGIKAの戦略的マンガ制作

ビジネス現場の悩みを解決する漫画制作を行います。

具体的な作品イメージやストーリーの案がお手元に無くても構いません。ヒアリングを通じて課題意識や本当に伝えたいことは何かを伺い、ゴールに向けた具体化作業をお手伝いします。