「漫画を生成すること」と「漫画をつくること」は違う。AI時代に、人が漫画をつくる意味

生成AIの進化により、イラストだけでなく、漫画制作にもAIが活用されるようになりました。
現在では、キャラクターや背景の生成だけでなく、シナリオの作成など、漫画制作に関わるさまざまな工程でAIを利用できます。企業向けのAI漫画制作サービスも登場し、制作方法の選択肢は広がっています。
では、AIで漫画を制作できる現在、漫画家や編集者などのプロに依頼する意味はどこにあるのでしょうか。
レジカスタジオでは、「漫画を生成すること」と「漫画をつくること」には違いがあると考えています。
本記事ではAIと人の優劣ではなく、企業が漫画を制作する目的という観点から、人が制作に関わる意味について考えます。
AIでも漫画をつくれる。では、人に頼む意味とは?
AIを活用して企業漫画を制作することは、すでに現実的な選択肢の一つになっています。内容がすでに決まっていて、情報を漫画形式にすることが主な目的であれば、AIは有効な選択肢になり得ます。
一方、重要なのは、制作方法を先に決めるのではなく、「この漫画で何を実現したいのか」から考えることです。企業漫画の制作は、用意されたシナリオを絵にするだけとは限らないからです。
- なぜ漫画を制作するのか
- 誰に読んでもらうのか
- 何を伝えるのか
- 読後にどのような理解や行動につなげたいのか
- そのために、どのようなストーリーやキャラクターが適しているのか
こうした点を整理し、企画や構成に落とし込むところから漫画制作は始まります。
「漫画を生成できること」と、目的に沿った漫画をつくれることは、必ずしも同じではありません。
企業漫画では「何を描くか」を決めることが重要
企業漫画では、商品やサービス、会社の歴史、仕事の魅力など、伝えたい情報が多くなりがちです。
しかし、すべての情報を盛り込めば、伝わる漫画になるとは限りません。
たとえば、社史漫画の場合、会社の出来事を年代順にすべて紹介する方法もあります。一方で、その企業にとって重要な転換点や、当時の社員の経験に焦点を当てた方が、企業の特徴が伝わる場合があります。
採用漫画でも、仕事内容や制度を網羅するだけでなく、社員の具体的なエピソードを中心に構成することで、その会社で働くイメージを伝える方法があります。
ヒアリングから、漫画にするべき題材を整理する
レジカスタジオでは、企業へのヒアリングや資料の確認を行い、制作目的や想定する読者、伝える情報の優先順位を整理します。
ヒアリングを進める中で、当初は重要視されていなかったエピソードが、漫画の中心になることもあります。
社員にとっては当たり前になっている仕事の進め方や、過去のプロジェクトでの判断、開発時の試行錯誤などに、その企業の特徴が表れている場合があるためです。
企業から提供された情報をそのまま漫画にするのではなく、目的に応じて題材を選び、読者に伝わる形に編集する。
これが、人が企業漫画の制作に関わる役割の一つです。

制作目的によって、人とつくる意味も変わる
社史・周年漫画
出来事だけでなく、その背景や関係者の経験まで整理して構成できます。
採用漫画
仕事内容に加え、社員の考え方や職場の特徴をストーリーとして伝えられます。
技術継承漫画
技術情報だけでなく、開発時の判断や試行錯誤も題材にできます。
コンプライアンス・研修漫画
ルールを説明するだけでなく、具体的な状況を設定し、読者が考えるきっかけをつくれます。
ブランド漫画
商品・サービスの説明に加え、企業の考え方や背景まで伝えられます。
制作する漫画の目的や使用期間、求める品質などを踏まえて、適切な制作方法を選ぶことが重要です。
漫画は「きれいな絵」を並べれば完成するものではない
企画やシナリオが決まったあとにも、漫画としての設計が必要です。
漫画家はシナリオをそのまま絵に置き換えるのではなく、
- どの瞬間をコマとして切り取るか
- コマをどの程度の大きさにするか
- 人物をどこに配置するか
- どの表情を見せるか
- 背景をどこまで描くか
- セリフと絵をどう組み合わせるか
といった判断を行います。
一つひとつの画像としては完成度が高くても、同じような構図が続いていたり、コマ同士のつながりが分かりにくかったり、背景の情報量が多すぎたりすると、漫画としては読みづらくなることがあります。
反対に、あえて背景を省略したり、セリフを使わず表情だけで状況を見せたりすることもあります。
一枚の画像としての完成度と、漫画としての完成度は別のものです。
一コマ単位ではなく、ページ全体、作品全体を通して読者の視線や情報量を調整することも、漫画制作に必要な専門性です。

「誰が描いても同じ」ではない。漫画家の個性も作品の一部
漫画家による違いとして分かりやすいのは絵柄ですが、作家ごとの特徴はそれだけではありません。
人物の感情表現、会話のテンポ、アクションの見せ方、日常場面の描き方など、それぞれに得意とする表現があります。
そのため、同じシナリオでも、担当する漫画家によって作品の印象は変わります。
企業漫画でも、人間関係を中心にしたストーリーと、技術開発を題材にしたストーリーでは、適した漫画家が異なります。
レジカスタジオでは、希望する絵柄だけではなく、企画のテーマや想定読者、必要となる表現を踏まえて漫画家を提案します。
漫画家を単なる作画担当としてではなく、作品を構成するクリエイターとして選ぶことも、漫画制作の重要な工程です。
「AIのほうが安い」とは、必ずしも言い切れない
AIを活用することで、人による作画工程を削減できる場合があります。一方、一定以上の品質を求める場合には、生成後の確認や修正に工数がかかることもあります。
たとえば、
- キャラクターの特徴が各コマで統一されているか
- コマ同士の流れが自然か
- 構図が単調になっていないか
- 背景の情報量が適切か
- ページ全体の視線誘導に問題がないか
などを確認し、必要に応じて再生成や修正を重ねる場合、そのためのディレクションも必要です。
そのため費用を比較する際には、作画・生成費だけではなく、求める品質の漫画を完成させるまでに必要な工程全体を見る必要があります。
レジカスタジオでは、企画から完成まで一貫して制作
レジカスタジオでは、作画だけでなく、企業漫画の制作に必要な一連の工程に対応しています。
ヒアリング → 目的・読者の整理 → 企画・構成 → シナリオ → 漫画家の選定 → 作画 → 確認・調整 → 完成
企業には、自社の事業や歴史についての知識があります。漫画家には、漫画表現についての専門性があります。編集者はその間に入り、制作目的や読者を整理しながら、漫画としての企画や構成をつくります。
三者がそれぞれの視点を持ち寄りながら制作することが、人と企業漫画をつくる特徴です。
「漫画を生成する」のか、「漫画をつくる」のか
AIによって、漫画制作の方法は増えています。AIの品質も今後さらに向上していくと考えられます。
だからこそ、「AIか人か」という二者択一ではなく、漫画の目的から制作方法を考えることが重要です。
決まった情報を漫画という形式にすることが目的なのか。
それとも、企業の中にある情報を整理し、企画し、その企業に合った表現で読者に伝えることが目的なのか。
後者であれば、編集者や漫画家と一緒に制作することには、現在も大きな意味があります。
企業漫画の制作をご検討中の方へ
レジカスタジオでは、社史・周年、採用、技術継承、研修・コンプライアンスなど、目的に応じた企業漫画の企画・制作を行っています。 「まだ企画が固まっていない」「自社の場合、どのような漫画が適しているか分からない」という段階からでもご相談いただけます。
解説者

レジカスタジオ スタジオ長 小崎 文恵
兵庫県生まれ。立命館大学卒。GCDF-Japan キャリアカウンセラー。LEGIKA 理事長・CEO。
ベンチャー企業や人材紹介会社での経験等を経て、2014年7月よりジョイン。レジカスタジオのトップとして制作組織を束ねるだけでなく、マンガ表現の新たな可能性を、経営者として積極的に展開している。